20.生生世世
吉田盛之(日本)
タイトルの「生生世世」(しょうじょうせぜ)とは、「何度も生まれ変わること」「生まれ変わりのたびに」といった意味を持っています。特に仏教や輪廻転生の思想と関連して使われることが多く、人生や存在が単なる一度きりのものではなく、次の生やその次の生にわたって続いていくという概念を表します。
仏教における重要な教えの一つに「輪廻転生」があります。輪廻とは、生物が死んだ後、次の生を受けて再びこの世に生まれ変わるという考えです。「生生世世」は、このサイクルが何度も繰り返されることを指します。人間は死後に業(カルマ)に基づいて次の生を迎え、善行を積むことで解脱(悟りを得て輪廻から脱出すること)を目指します。魂が生まれ変わる先が6種類あるとされており、このことから、輪廻転生ではなく六道輪廻と表現されることもあります。
六道とは、地獄・餓鬼(がき)・畜生(ちくしょう)・修羅(しゅら)・人間(にんげん)・天上の6つです。
作品展示の入り口から各道を石と光を配置し表しています。また、餓鬼道から人間道には点滴が配置され、時間を意味しています。
「永遠の縁」
特定の人との縁がただ今生だけに限られず、生まれ変わるたびに続いていくことを示す場合にも使われます。たとえば、恋人や親子などの関係において「生生世世にわたって共にありたい」という願いが込められたりもします。
「人生の繰り返し」
仏教以外でも、人生が何度も繰り返されるという思想が人々の生き方や価値観に影響を与えることがあります。生まれ変わりの思想を通じて、今の人生だけでなく次の人生でも善行を積むことが大切であると考える人もいます。
このように、「生生世世」は、単なる時間の継続というよりも、存在や関係が永遠に繰り返されるという深い意味合いを持っています。
私の母は、2019年1月9日に「急性骨髄性白血病」を発病し、長期間の闘病の末、2024年3月15日に亡くなりました。この作品を制作するのに、母の介護や死も大きく影響しています。
【宗教的な死生観】
多くの宗教は、死生観に対して独自の教えや信念を持っています。
キリスト教では、人間の生涯は一回限りで、繰り返すことができないものと考えられます。だから、輪廻とか生死の流転などの思想はありません。また、ユダヤ教では輪廻転生に関する教えは特にありません。
日本の神道では、死者の魂はこの世とあの世を行き来し、祖先の霊や自然の神々と共に存在すると考えられます。
イスラム教では、死んだ人は魂が身体から離れますが、最後の審判の際に復活し、アッラーの御心に叶った信仰者は天国に行くと考えられています。そのため、イスラム教徒は身体が無ければ復活ができないことから火葬を行わずに土葬を行います。
ヒンズー教徒は、輪廻転生の一環として、だれかが動物の体に生まれるかもしれないと信じているため、動物を尊重し、菜食主義者であることが多いです。
総じて、死生観とは「人はどう生き、どう死ぬべきか」「死とは何か」「死後に何があるのか」についての多様な考え方を示す概念であり、時代や地域、個人によって異なる多様性のあるテーマです。
作品詳細
- 作品番号:20
- 制作年:2024年
- 公開期間:9月22日(日)〜11月10日(日)火・水定休※祝日除く
- 鑑賞料金:パスポート提示または個別鑑賞料金1,000円
会場・アクセス
- 所在地:TAACHI(〒952-0011 新潟県佐渡市両津夷53番1)
- 開館時間:8-9月:10:00〜17:00、10-11月:10:00〜16:00
- 休館日:火・水曜定休
- 駐車場:あいぽーと佐渡駐車場または北埠頭駐車場 →駐車場の位置をみる
吉田盛之Morito Yoshida
1972年佐渡島⽣まれ。95年から東京を拠点に制作を開始し、その後、米国、沖縄等に拠点を移し、現在は佐渡島を拠点として活動。「さどの島銀河芸術祭」を立ち上げた人物であると同時に、芸術祭を統括するプロデューサー。2018年に開催されたプレ開催に参加した以来、2度目の参加。最近はインスタレーションだけでなく、写真、抽象絵画作品も制作している。